ぷっちTSFシリーズ・第壱弾!

ロデオ・タンデム・ビート・スペクター

              作・たまには、いや・・いつもおバカなジョニー


「あッつーい!」
頭から被っていたシーツをはねのけ、愛理は身体を起こした。
「へへっ、なんだよ。もうギブアップか?」
上半身を起こした愛理を見て、俺は言った。
「だって、もー汗でベトベトだよー」
愛理は汗まみれになった自分の身体を見回し、馬鹿っぽい顔をして喚いた。よほど熱かったらしい。けど、愛理のそんな表情もまた可愛らしい。
「いま何時だ?」
「うーん、十一時過ぎ。もう大学いっても間に合わないね」
ちょうど午前中二限目の授業が始まったところだろう。
「単位余裕あんだろ。物理なんて面倒だし、関係ないじゃん」
「・・・そだね」
愛理はニコッと微笑んだ。

汗まみれの俺達−−−
もう数えきれないぐらい、セックスをしてる。
昨夜はなんど壊れただろう。壊れては再生し、壊れては再生しを繰り返す。身体はポンコツになっても、セックスする度に俺達は興奮に身を委ねるのだ。まるで、エッチする為に生まれてきた存在。不景気とか、就職難とか、リストラとか、塩ジイとか、聖域なき構造改革なんて、みんな関係ない。
エッチして気持ちいいのが、なんといっても一番いいのだ。
「どしたの?」
仰向けになり、天井を見つめていると、愛理が首を横に傾げた。
「なんでもない」俺はそう答えた。
「ふぅーん」
愛理は鼻を鳴らし、近くに落ちていた白いパンティをたぐり寄せる。そして、それに足を通しながら、「お昼作るね」と言った。
「昼飯食ったら、続きしような」
「またやるの?」
愛理は信じられないという表情をして、俺を見た。
「いーじゃん。愛理も気持ちいいの好きだろ?それともしたくないのか?」
「うーん」愛理は少し考えた後、満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに「する」と答える。
そうそう。やっぱセックスは最高なのだ。男も女も関係ない。TSFなんて所詮幻ごとなのだ。んっ、TSFってなんだ。うーん、よくわからん。最近みたアダルトビデオのタイトルかな。まーいいや。
「冷やし中華でいい?」
ブラをつけ、その上からピンクのぴちTシャツを着込んだ愛理が、尋ねてくる。Tシャツの裾と白いパンティの間から、可愛らしいヘソが顔を覗かしている。
「いいねー♪」
可愛らしい愛理の全身に、じぃーっと視線を這わせ俺は答えた。
小柄で、むっちりとした愛らしい身体、薄い耳たぶ、パチッとした大きな瞳、ぼてっとした桜色の唇、そして愛らしいショートボブ・・・愛理は最高のパートナーなのだ。

俺に見送られ、愛理は台所へと向かった。
部屋に残された俺は、身体を起こし、枕元のダバコを手に取る。中から一本取りだし、口にくわえ火をつける。
「ふぅ〜」
クタクタとなった身体に染みいるようで、なんともたまらない一時である。
「まーくん。冷蔵庫にあるトマト大丈夫?」
台所から、愛理の可愛らしい声が飛んできた。トマト?ああ、そういえばあったっけか。お袋が先週、箱いっぱいに送ってくれたヤツの残りが。
「おう。多分大丈夫」と俺は考えず返事をする。
「またもー適当なんだからー」愛理はブツブツいいながら、トマトを冷蔵庫から取りだし始めたようだ。
セックスあとの、そんなやりとりもまたいいものなのだ。まさに二人は、ラブアンドピースである。
「ふぅ〜」
タバコの煙を天井に向けて、俺は吐きだした。
とその時だった。煙の舞い上がった天井から、突然声がした。地の底から響くような、男の声・・・
『時は満ちた!』
なんだなんだ。と俺は天井を見回した。
『連なるモノの力を得て、我はここに復活せしモノなり!』と声は続く。
だが見回せど、誰がいるというワケではない。目に見えない何者かが、天井、上のほうで何やら喋っているようだ。
『ついに復讐の時はきたのだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
響くような男の声がそう叫んだ後、シーンと辺りが静まり返った。
まるで何事もなかったように、静かになった。
いったい、今のはなんだったのだ?
不思議な出来事に、俺が首を傾げると、今度は台所から悲鳴があがった。
「きゃああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
愛理だ。ただ事ならぬ愛理の悲鳴に、俺はバッと立ち上がり、急いで台所へ向かった。
台所にやってくると、床にトマトが転がっていた。
愛理は流し台の前に立っており、下を俯いたままだ。
「どうした?」
そう声をかけると、愛理はフフフッと不敵な笑みを浮かべ顔をあげた。
いつもの可愛らしい愛理。だが、何処かいつも違う。
「愛理?」
そう呼びかけると、愛理は自信たっぷりにニヤッと笑った後、こう名乗った。
「わしの名前は信長。織田信長じゃ!」
愛理のわけわからぬ台詞に、俺は思わずあんぐりしてしまう。
「逆臣・明智光秀は何処だ? ええーい、隠すと貴様も切り捨てるぞォ!」
愛理は小さな拳を奮い立て、真剣な面持ちで言う。だが、ちっとも迫力がない。
「おい、愛理どうしちまったんだ?」
愛理が悪ふざけを始めたと思い、俺は小ばかにするように言った。すると腹を立てたのか、流し台に置いてあった包丁を手に取り、それを構えた。いつもの愛理とは思えないその言動・・・まるで別人のようだ。何か悪い霊に、ってまさか・・・!?
奇妙な考えが頭に閃き、俺はそれを確かめるべく尋ねてみる。
「あんた、ひょっとして本当に織田信長なのか?」
そう尋ねると、愛理は胸を張って、「そうじゃ。わしは信長。連なりしモノの身体を得て、蘇ったのじゃ!」と答えた。どうやら本当らしい。そういえば、愛理が前に言っていた。自分は織田家の血をひいていると。もちろん、今から数百年も前の事だから、愛理にそんな自覚はないが、信長の霊が言っている「連なるモノ」っていうのは、どうやら血縁関係にある愛理を示しているのだ。
だが、しかし・・・
「プッ、プププッ・・・・アーハハハハッ!」
爆笑。爆笑。また爆笑。腹がよじれるほど、俺はひとり笑い転げた。
「なっ、何が可笑しい。貴様、わしを愚弄するとタダではおかぬぞ!」
愛理、いや愛理に取り憑いたらしい信長の霊は、愛理の可愛らしい声で怒鳴った。これまた迫力なしだ。あの天下に名を轟かせた織田信長ともあろう人間が、数百年の時を経て、蘇ったのが愛理の肉体とは・・・こりゃ愉快痛快怪物くんなのだ。だから、俺は言ってやった。
「あんた。その格好で、天下統一でもしようってのか?!
 そんな可愛い信長様じゃー、天下はおろか、三丁目制覇すらできないぜ」と。
ビシッと指さし、俺が言うと、愛理、いや信長は「えっ!」と戸惑うように、自分の身体を見下ろした。小柄な身体にピッチリとあったピンクの可愛らしいTシャツ。丸みを帯びたそのボディラインと、胸元のふっくらとしたオッパイの膨らみがくっきり浮かび上がっている。おまけに、へそ出し状態で下半身は可愛らしいパンティだけ・・・そんな霰もない姿に、信長は顔をカァーと赤らめた。
「こっ、これは女子ではないか!?」
どうやら、いまごろ気がついたらしい。
自分の子孫が男だけだと思ったのか、それとも単なる虚け者なのか。なんにしてもとんだ間抜けのようだ。だが、これはなんかおもろい。
「ハハッ、こりゃいいや!」
面白い、からかってやれ。と、俺は愛理の身体の後ろに回ると、戸惑う信長の脇の下から手を忍ばせ、Tシャツの上からオッパイをギュッと鷲掴みにした。
「なっ、なにをするのじゃ!」
抵抗しようと信長は、身体をジタバタさせるのだが、女である愛理の身体ではたかが知れている。愛理の耳たぶを軽く噛み、ムニムニとその胸を揉んでやる。すると信長は熱い吐息を漏らし始めた。外見は可愛らしい愛理そのものだが、いま感じているのはあの織田信長なのだ。こりゃつくる会のメンバーもびっくりたまげる事だろう。あの信長をいたぶる・・・まさに歴史に名を刻むに等しい出来事なのだ。
「やめろ、やめろと言っているの・・・あんっ!
 わっ、わからんのかぁ〜・・・っあ、ああ・・・」
諦め悪いというか、信長は身体をよじり、まだそんな事を言ってる。
「どうした、感じちゃうかい?」
いっきに本丸だ!と俺はパンティに手を差し込んだ。そしてアソコをいっきに攻め立てる。信長は桜色の下唇を噛みしめ、なんとか堪えようとするが、俺のテクニックの前についに炎上を始めた。ジワッとパンティが湿りだし、「むっ、無念じゃ〜」と言葉を残し、ガクッと意識を失ったのだ。
「・・・?」
力を失い、立っているのもままならない愛理の身体を支えていると、再び意識が戻る。それは先ほどまでの表情とは違い、とぼけたいつもの愛理のように思えた。どうやら、信長は昇天したようだ。興奮して昇天だなんて、なんてトゥナイトチックなんだ。(笑)
「愛理?」
そう声をかけると、愛理は俺の顔を見上げ、「あれっ、アタシ何をしてたの?」と周りを見回した。どうやら信長に乗り移られていた事を覚えていないようだ。
「なんでもないさ。愛理は冷やし中華を作ってたんだろ」
愛理をちゃんと立たせ、俺はいつの間に落ちていた包丁を拾い上げた。
「あっ、そうか。アタシ寝ぼけてたかな」
「ハハハッ・・・」
まさか信長に乗り移られてたなんて、とても言えない。
「とにかく早いトコ、冷やし中華頼むぜ」
「うっ、うん・・・」
愛理はなにか納得がいっていない様子だが、それが何なのか判らず、首を傾げていた。まっ、そんなのもたまにはありなのだ。

<にーんげん、五十年〜♪ おしまい>



<あとがき>
こんな作品、あとがき書くほどでもないのだが・・・
愛しの暗黒卿が、以前に全世界を巻き込んだ「ワールドワイドTSF小説」を書いたので、それに対抗しようと書いたのが、この「タイムスリップTSF小説」です。これをTSFというのかボクにもわからないけど、最近の小説って気合い入ってるの多いから、肩の力抜いてニヤニヤ読めるこーゆーのもありかなって思います。

二〇〇一年七月某日。
ニュースステーションの歴史教科書問題に耳をそばだてながら。