Beautiful morning with you.<キミを探して>
それからしばらく、いずみは相変わらずの調子だった。
俺はいずみの代わりに、ひとりで結婚式の準備を進めることになったのだが、仕事と式の準備でいったりきたりとなり、心身ともに疲れ果てていた。うちの親や同僚までもが「なんでアナタひとりでやってるの? いずみさんはどうしたの?」と心配しだす始末。そんな日々を送る中で、俺も「なんで、こんなことをやってるんだろう」といった孤独感に似た気持ちになっていった。

だが、それから二日後の朝・・・
最後まで、いずみを信じて待った甲斐があった。と思えるような出来事があった。
出勤するも、連日の疲労から机に頭をつけボゥーとしていると、いずみが近寄ってきて、
「心配かけてごめんなさい」と頭を下げたのだ。
「あっ、いや・・・俺のほうこそ」
席から立ち上がり、俺はいずみに言った。
「よっ・・・あっ、いや昌信さんばかりに、やらせて・・・。私どうかしてたみたい」
「いいんだ。俺のほうこそ、いずみにかまってあげられなくて・・・ごめん」
とにかく良かった。これで無事、結婚式を挙げられるのだ。
いずみの調子は相変わらずだったが、それでも笑みが零れるようになったし、以前の、いつものいずみに近づきつつあるのが日を増すごとに判った。そんな努力するいずみの姿を見て、俺も多くは尋ねず、いずみを幸せに、そして支えてあげる事だけを心に誓った。

そして結婚式当日。
新婦控室に入ると、白いクラシカルドレスを身にまとった、俺の花嫁がメイクの真っ最中だった。
「はい、出来ました」
式場の人がメイクを終え立ち上がると、いずみのお母さんや姉さんが「まあ、奇麗」と褒め称えていた。確かに奇麗だった。頭にのせたティアラやドレスの表面に配置されたパールが天井からの光を受け、花嫁を輝かせていた。
「あら、昌信さん」
入り口に立つ、俺に気がついたのか、いずみの家族は部屋から退室する。
いずみのお父さんは、ポンと俺の肩を叩き「いずみを頼んだぞ」と言い残した。
「・・・」
そして、部屋に残された俺は、自分の花嫁の前へと歩み寄った。
美しい花嫁は、俺の顔を見上げた。俺は手にしていた白い手袋をギュッと握りしめ、コクッと頷いた。そして純白の手袋に包まれた花嫁の手をとり、二人で歩き出した。

<おしまい>


あとがき