しかし、女性として肩を抱かれてホテルに入る事になるとは‥‥‥。
俺が静江の服を、静江が俺の服を着て街を歩く‥‥
無茶苦茶、変なはずだが、誰も奇異な目で見なかった。
恐るべし、入れ替えロープ!

 お互いシャワーも終え、いよいよだ。
「なあ、静江」
静江が口を開く。そして続いて出た言葉は‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「君は、誰なんだ?」‥‥‥‥!!


ジョーカー氏の悩める日々 の続き続きは続く

                               作:英明


「えっ」
「誰なんだと聞いているんだ」
「わ、わたしは静江よ、静江に見えないの?」
「静江には見える。では、なぜ、君はこれを自分のだというんだ?」
ベッドにほおり投げる。入れ替えロープだ。
「俺には、これが入れ替えロープに見えるんだ。
こんなものが存在するなんて、信じられないが、
俺にはこれが入れ替えロープに思えてしょうがないんだ。
そして、君はこれを自分のだという。
静江君がこんなものを持っているのは不自然だ。だから、
入れ替えロープを使って、誰かが静江君に成りすましていると思ったのさ」

 ほほう、元は静江でも流石はジョーカーだ。すごいぞ、俺。
「じゃあ、俺の正体は、わかっているのか」
「おそらく‥‥‥」
言葉を切って、ゆっくり息を吐く静江。そして、
「ジョーカー‥‥‥。俺自身、何か違和感を感じるし、
記憶も、特に、君が事務長室を出て行く前後があやふやだ。
そして、この入れ替えロープの存在。
決め手は、君がこれを自分のだと言ったこと。これですべてがつながった」
「さすが俺だ、ほめてやる。でどうするんだ、元に戻るのか?」

「‥‥‥‥‥‥嫌だ」
「え?」
「嫌だと言ったんだ」
「なぜだ?」
「面白いからだ」
そうだった、こいつはジョーカーだった。俺はこういう奴だったのだ。

 ニヤリと、とても静江とは思えない表情を見せて、彼女?奴は言葉を続ける。
「面白いじゃないか、俺には君がどう見ても静江君に見える。
それが、実は俺で、俺そっくりな話し方をする。
そして、君には俺が静江に見えるのだろう。自分のことは意識できないが、
お互いにとって相手がTSしている状態じゃないか。これは面白い」
「確かに、そうかもしれないが、俺は嫌だぜ。
俺自身は女装しなくちゃならんのだぞ。俺には、そんな趣味はない」
「いいじゃないか、似合っているというか、本人そのものに見えるのだから」
「よくない、俺は窮屈だし、俺にとっては、男のジョーカーが女装している感覚しか
ないんだぞ。元に戻ろうぜ」
「い・や・だ」
「このやろう〜」
「はっはっは。もっと怒ってくれ。静江君がそんな風に怒るところを見られるなんて、
愉快だ。それに俺は俺のままだから生活に変化はないし構わんぞ。
 だいいち、君は自分の立場を理解していないようだな。
内面はともかく、世間が認める立場は、俺が事務長で、
君は看護婦の雨宮静江なんだぞ。
そして、体力的にも俺は男で。君は女だ。
だから、‥‥‥‥‥‥こういうことになるんだよ!」

 奴は俺を抱きかかえると、ベッドに放り投げ、そのまま上から組み伏せた。
「くっ、よせ!」
払いのけようとするが、びくともしない。俺が静江に押さえ込まれるなんて。
「どうだ、見かけは静江の俺に、女として犯される気分は」
「そうか、男性に襲われるて、こんな感じなのか」
もてあそばれながらも、《次なる新作に使えるかも》と
どんな状況でも、作者魂を忘れない。偉いぞ、俺!

と思いつつも、
《静江に力ずくで犯されている》
倒錯した快感が俺を支配していくぅぅ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
女の喜びを知っていくジョーカーだった。(←自分でナレーションを入れている)



一週間が過ぎた。未だに、俺は静江として生活している。
看護婦の激務に、女装の苦痛(これには慣れた?)、
同僚のいじめに、それに静江のからかいに耐えながら、
俺の苦悩の日々は続いていく。

                                          【終】

【解説2】
 お互いの性機能について、解説せねばならない。
入れ替えロープは、人格だけでなく、体力や技能までも入れ替える。
その点を考慮すると、性的機能も入れ替わっているはずである。
だから、静江の立場になっているジョーカーのペニスは
ジョーカーの目から見ると、ペニスという生殖器だが、
実際には単なる排尿の器官に過ぎない。
要するにジョーカー本人からすると不能の状態に他ならない。
 また、ジョーカーの立場になっている静江にはペニスがない。
ペニスに相当するのが、クリトリスということになる。
クリトリスは多少勃起するが、これでは極端な短小である。
お互い、さびしい状態である
 が、愛があれば超えられる(ないか)。

もともと、子供の漫画なので、こういう点に
突っ込むものではないでしょう。


【後書き】
え〜、一応、ジョーカー氏に作品のアップの許可は頂いてあります。
まず、メールで「こんなの書いちゃいました〜」
とかる〜い感じでメールする。
彼に届くメールは膨大な量であるし、
充電状態でネットから離れているという情報も得ているから、
まず読まないであろう事は計算できる。
このまま、載せても良いのだが、さすがに後が怖い。
そこで、仕事の真っ最中であろう午後3時頃に
電撃的に彼の携帯の電話を掛ける。
「はい」
「ども、英明です」
「えっ!ちょちょっと、待って!」
しめしめ、慌てているぞ!そこにたたみかけるように、
「メール、読みましたぁ?」
「い、いや、すまん、まだ」
「え〜、ひどいなあ、力作を送ったのに!感動大作ですよ。
ジョーカーさんも少し出演していただいたんですよ。で、インクエストで
納涼祭を企画しているんですが、そこに掲載したいのです。
いいですよね。多少手直しするかもしれませんが」
「う、そうか、そいつは楽しみだなあ、期待しているよ、英明さん」
「やった、いいんですね。あ、そうそう、横浜ではお世話になりました」
話題を変えねば!
「ああ、俺も楽しかったよ」
「あ、ごめんなさい、仕事中でしたね。
納涼祭に遊びに来てくださいよ。では、また。」
「おう、了解。じゃあ!」

ふふふ、了解さえ取ればこちらのモノである。
あとは、たかしんにを騙して、アップさせるだけだ。

 

 

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