インクエストの夜は更けていく

                                          作:英明      

「只今、帰りましたあ〜」

その声に、英明とらんおうが振り向き、

「おう、ご苦労、たかしんに」

「何の買い出しですか‥‥‥ほう、焼き肉の材料ですね。
え〜と、今日は何かあるんですか?」

「えっ、らんおうさんも知らないんですか?」

「らんおうさんは、仕事熱心だけど、そういう情報には疎いからなあ。
なんでも、新人が来るらしいぞ」

「さすが、英明さん、そういう情報には強いですねえ」

「な、なんだよ、なんだか、俺が仕事をしてないみたいじゃないか」

「そ、そんなこと言って‥‥(るんですよ)。
で、どんな人がいらっしゃるんですか?」

「いや、それは俺も知らない」

 

「でも、歓迎会なら、料理屋か居酒屋に行きましょうよ。ねえ、らんおうさん」

「そんな余裕はうちの会社にはないでしょう」

「その通りだ」

ドアの方に3人の視線が集まる。

「きょうじさん!」

「そうだ、たかしんに。だいたい、お前の企画した『変身シマスク』が
大失敗したからじゃあないのか」

「それはないですよ、英明さん。僕の発案に、『これは売れる』と太鼓判を押した上
大量に生産したのは英明さんだったじゃあないですか」

「あれ、そうだったか?だいたい、せっかく異性に変身しても
顔が半分近く隠れてしまうんじゃあ、キスもフェラもできないぜ。 第一、暑苦しいし」

「いや、英明さんのネーミングが悪かったんですよ。
まるっきり親父ギャグじゃあないですか?」

「ええい、やめろ、醜い争いは!せっかく、俺が経費を節減して、
食材費を捻出したのに。嫌なら、無理して食わなくてもいいんだぞ」

「いえ、めっそうもないです」

「はい、食べさせていただきます」

さすがにおとなしくなる英明とたかしんに。

「それにしても、この暑いのに、焼き肉ですか?」

「な、なんだ、らんおうさんまで」

「いや、何か言わないと、台詞が無いというか、
存在を忘れられちゃうんじゃないかと思って」

作者:どきっ!最後にらんおうさんを登場させて、「あっ、いたのか」という
    
落ちにしようとおもっていたのに

「あれ?そう言えば、ジョニーさんとつるりんどうさんは?」

「ああ、つるちゃんにはホットプレートの調達に行ってもらっている。
それと、ジョニーさんは、新人君を迎えに行っている」

「おお、そうだった、新人さんてどんな人なの?」

「うん、実は、名前を「あさぎり」ということしか俺も聞いていないんだ」

「おお、あさぎりさんか!」

「らんおうさん、ご存知なんですか?」

「いや、台詞がないから言ってみただけ」

「らんおうさんて‥‥‥いったい‥‥‥‥英明さんは知ってるんですか?
そう言えば、英明さん、静かですね。‥‥‥‥‥‥‥‥あ、わかった、
また駄洒落を言おうと思ったけれど、思いつかなかったんでしょう」

「そ、そんなことはないよ」

と、否定する英明、しかし、図星であろう。

 

「ちわーす、つるりんどうです」

「おお、ごくろうさん。それ、どこから調達したの?」

「先月、つぶれたTS−WEEK社からいただいてきました」

「いただいたって、まさか、盗んできたんじゃあないだろうな?」

顔色を変えるきょうじ氏に、つるりんどうはきっぱり答える。

「そんなことはしませんよ、ちゃんと管財人に今開発中のゲームの
ベータ版と交換してきました」

「おい、大事なプロジェクトなのに」

「安心してください。ちゃんとバグは修正してありますから」

「いや、そんな問題じゃないんだが」

 

 

「さて、歓迎会の準備をするか?お、なんだ、たかしんに、嬉しそうだな」

英明の問いに

「だって、新人さんが来ると言うことは、やっと、
便所掃除から解放されると言うことですよね」

「え?お前、便所掃除、趣味じゃなかったのか?」

「そんなわけないでしょう、でも、どうしてそんなこというんですかあ?」

「そりゃあ、お前のプロフィール、得意技の項目、便所掃除になっていたから」

「ええ!そんな馬鹿な!」

あわてて、自分のデータを調べるたかしんに、

「ああ、便所掃除になってるう〜、
あれれっ?訂正できない。プロテクトがかかってるぅ〜」

「じゃあ、やっぱり、たかしんにが便所掃除だな」

「ええっ、そんなあ〜」

「くっくっく」

密かに笑うらんおうだった。

 

 

 

「それにしても、ジョニーさん、遅いよな」

「ええ、ホントですよね。もぐもぐ、こんなにおいしいのに、むしゃむしゃ」

「たかしんに、てめえ、食い過ぎだぜ。あ、それ、俺の肉ぅ!」

「って、英明さんの肉じゃあないだろう。
ジョニーさんにも残しておかないと後が怖いぞ」

「何が怖いって?」

「おお、ジョニーさん、ちょうどよかった、さささ、こちらへ」

「お、すみませんね。では」

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥おおい、酒がたりんぞお」

「たかしんに、一気飲み、行きますっ!」

「お前、飲み過ぎなんだよ」

「フカキョンはいい〜」

「いえ、フッキーですよ」

「幽体離脱しますっ!」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥インクエストの夜は更けていく‥‥‥

 

 

そのころ、東京駅には一人たたずむ、あさぎりの姿が‥‥‥

 

                                    【終】

 

というわけで、インクエストに強力な新人のあさぎりさんが加入しました。

今後ともあさぎりさん並びにインクエストをよろしくお願いします。

 

作者注:今回は会話の流れを妨げないため、

     誰の台詞かの説明を省きました。

     そのため、誰の台詞かわからない箇所もあると思います。

     まあ、深く考えずに読み流してくださいませ。

     それにしても、あさぎりさんが主役のはずなのに‥‥‥

 

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  (と、書いてみて、う〜ん、著作権というほどのままじゃあないなあ。でも、一応ね)