大阪の仕事を放り出し、速効で自分のアパートへと逃げ帰った僕。ふとんを被ってがたがた震えていた。会社にも三日出ていない。そろそろかな?と思っていたがやはり携帯に出社しろメールが送りつけられた。無視する訳にもいかず、仕方なく遅い出社となった。出社すると課長が手招きして僕を呼びつける。
「お前・・・・なんで大阪の仕事も終わらん内にこっちに帰ってきたんだ・・・!?」
「課長ぉおっ!!これには深ぁあああああい!!訳がぁあああ、説明すると長くなるんですけど、します??」
「わかってんだろーけど会社辞めるのと、社長とサシで飲む!のと、どっちを選ぶ??」
「はぁ・・不況風吹き荒む社会ですし、喜んで!社長と飲ませていただきます、はい。」
「そうか、若くて男前のお前だ、社長は手を叩いてお喜びになるだろうよ、御愁傷様ぁー、行っていいぞぉ〜。」
「はっ!失礼しますー。」
真夜中の使者2!
作 たかしんに
僕は株式会社『アバロン!』入社3年目の石塚 ひかる、24才。自分で云うのもなんだけど『顔はいけてる!』会社員です。若い女の子に声をかければゲット率は90%は超えるかな?しかしながら会社での業務成績はおもわしくない。
アバロンの社員構成と云うと60才になる女社長を頭に300人の男性社員で支えられている。なぜ女性社員がいないかって??社長が女を入れる事をかたくなに拒んでいるから。彼女は会社を自分の『ハーレム!』にしたいんだって。
勤務終了時間の午後5時00分に終業チャイムが事務所に鳴り響くが誰も帰ろうとする奴はいない。定時で帰ろうモノなら一発で首を切られる為、皆一様に書類作成の振りを続ける。一種心地よい緊迫した空気の中、場にそぐわないただれた空気が紛れ込む。
「石塚ちゃぁああああん!!大阪でヘマした男前の石塚ちゃんはいずこにぃいいい??」
会社の廊下に響き渡るダミ声。アバロンの女社長「綾乃小路昌子」(あやのこうじまさこ)。会社社員からは新入社員キラーとして股子(またこ)と言われている。
事務所に居る社員が一斉に僕に視線を集める。その意味たるや僕に対しての哀れみが隠っていた。なにせ60才女性の夜伽相手をしなくてはいけないのだから・・・。相手が60と云えども若作りであって外見三十路位に見栄えるお身体だったら楽しいと思うのだけど、身長150センチに体重90キロの恰幅の女力士!と見受けられる風体では男のナニは立つのに相当の助走距離が必要だと思う。もしかするとテイクオフできんかもいしんない。もし股子の誘いで役に立たなかったらそれはアバロンの退社を意味するから是が非でも立てなくては。
「はい!石塚ひかる!ここにまかりはせ参じました!」
なぜに僕の言葉が江戸時代に戻るのかは謎である。
「あらぁ〜!ひかるちゃん!?ええ男やねぇ〜えええ!大阪での大失態、その事のあらましを津々浦々聞いてあげるから。」
ライオンにつかみ掛かられたインパラの気分の僕・・・・。
「ふっふっふっふっ〜!今日はそのほとばしる肉体にたっぷり訳を聞いてあげるから!寝かさないわよっ!?」
課長が僕の後まで来てくれて『ぽんっ!!』と肩を叩いてくれた。振り向く僕と目線が合う課長。その目からは、『男になってこいっ!?』と云うエールが・・。僕も『男を見せつけてやりますぅううっ!?』と云う痩せ我慢のビ〜ムが交わされる??
その男同士の暗黙の友情を引き裂くように僕の腕を取り、ずりずりと引きずって行く股子。事務所内の男共が涙を垂らして見送ってくれた。
仕事の不手際を糾弾する会なのに料亭でごちそうをたらふく喰らう僕と股子。料理ににんにくやすっぽん!の肉生き血、ハブの焼き蛇、海蛇の薫製、うつぼの姿焼き、レバ刺し、などなど名立たる精がつく料理のオンパレードに今晩の大事が頭に浮かぶ。
「ど〜お!?ひかるちゃん!力がみなぎってきた??」
股子が僕の乳首をワイシャツ越しになぞりまくる・・。
「しゃ・しゃ・社長ぅうっ!!こんな所でお戯れが過ぎますぅうっ!!」
「ええの、ええの!ちょっとここでひかる君を見たくなったちゃったぁ〜!」
股子は僕を押し倒し馬乗りになってスラックスのベルトを緩めはじめた。股子のお尻で僕の顔が潰されそう。
「ひゃ・社長!!ああっ!?いやっ!やめてぇえええっ!?」
「いいわぁ〜いいわぁ〜!若い男のあがなう声・・はぁ〜はぁ〜私の中のメスがおったってくるぅ〜!!」
股子が僕のスラックスのベルトを引きちぎり青白ストライブのトランクスに手を入れる。
「あああああああっ!これが若い男のぉおおおおっ!!おとこのぉおおお・・・、お・とこ・・・・・の・・??・・・・・・・・??」
股子が欲望駆け巡る表情をだんだんに強張らせていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ひかるく・ん・・・!?
トランクスの中で私の手と握手する手が・・あるんだけ・ど・・・。これはいったい何・・・??」「えっ!?」
股子はトランクスに突っ込んでいる手のもう一方でトランクスをずり下げる。そして『何か!?』を見た・・・・・。僕の顔に乗ってるでっかい肉の固まりが小刻みに震えだしたと思うと『ぎゃぁあああああああああああああああっ!!』と叫び、四つん這いで部屋の外に駆け逃げて行く。
股子のでかい尻を目で追っていたが、ふと目線を僕の股に戻す、そこには日常いつも見て居た形のモノは無く、白くしなやかな女の手が生えていた。僕の両手を数えてみる。
「右手有り!左手有り!いっぽん!にほんっ!!うんっちゃんと揃っている。」
独りぶつくさ言っていると股の手が『よかったねっ!?』てな感じで僕に握手を求めてきたので喜んでその求めに応じてあげた。手と股手で握手、はたから見るとこんなに異常な状況は無い!!握手を交じあわしながら我に変える。
『ぎゃぁあああああっ!!股に手・てがぁああああっ!
またにてぃー(マタニティー妊婦の事)』としょうもないギャクを入れ握手をしたままお座敷を飛び出す!!股子が女中、女将、調理人などを引き連れ戻って来た所に丁度出くわした。
「あれよぉおっ!あの子の股に手が生えてるのおおおぉっ!!ほんとよっ!ほんとなんだからぁああっ!!」
「誰かぁああっ!僕の股に手がぁあああっ!!手がぁああああああっ!?」
狂乱する僕本体の手には、しっかり僕の「イチモツ」が握られていた。下半身丸出しでイチモツを握り、走り回っているひかる・・・。それを唖然と見続ける股子と料亭の使用人達。
「あのぉ・・・綾乃小路様・・・。あの若者が手に握っているものは・・どーしても若者本人の『しろもの!』とお見受けいたしますが・・・。」
女将が言い難そうに言葉詰まらせ進言する。使用人達も言葉少なくそれを肯定する。当の股子もひかるの股をまじまじと見て、先程見たものは気の迷いと判断し、真っ青だった顔色を真っ赤に変える。
「この私の顔に泥を塗ったわねぇ〜!?お前は首だぁああああっ!!」
股子は僕に大声で言い放つとずかずかと料亭を去っていった・・。イチモツを握って呆然と立ち尽くす僕を残して。
料亭の板長が「ぽんっ!」と肩を叩いて『人生会社だけじゃないから、ま、頑張んな・・。』と励ましてくれた。
うれしかったが悲しかった。僕は身なりを整え、料亭の皆さんの励ましを背中で受けつつ帰路につく。
「今日は疲れた・・・・。」傷心しながらもなんとかアパートに辿り着き、部屋のベットに横たわる。
「なんで股に手があるように見えたんだろ・・・・。」
ナニが手に変わってないだろうか?そんな不安がよぎり、スラックスとトランクスをずり下げる。ちゃんと僕のナニだった。ナニに恨み節が湧いてくる。
「お前さえちゃんと機能してたら会社を首になんなかったのにぃ・・・。」「ふんっ!悪かったわねっ!折角助けてやったのにぃっ!!」
えっ!?今女の・・
声が聞こえたような・・・・・
「私があの女の毒牙から助けて上げたのに、恨み節とは聞き捨てならないわねっ!?」
僕は狭いワンルームの部屋の中をくまなく見回す。誰もいない。おかしい・・じゃー今の女の声はどっから・・・・?
「にぶいわねぇ〜あんたの中から話かけてんのよー!!ったく・・頭の回転悪いんだからぁ〜!」
僕の脳裏に大阪の半壊した女性の顔が浮かんだ・・・。「まさか・・まさかっ!?まさかぁあああああああああっ!!」
「そのまさかだよー!きゃははははははははっ!!」
あの笑い方はあの時の女そのもの。彼女は大阪から憑いて来てしまったのだ・・・・・・。
あとがき
もう暑くて暑くてぶっ倒れそうな程暑い日が続いております。ここで恐怖のお話などを一つ。僕が仕事を終え帰りの渋滞を避ける為に林道の脇に車を停め休んでいました。あたり一面冬の闇に埋もれています。疲れてうとうとしてますとこんこんとドアを叩く音が・・・・。
こんな所に一体誰が?と起きて窓の外を見てみると誰もいません。気のせいかな?と再びシートに横になるとこんこんとドアを叩く音が・・・・。『え!』窓を開け廻りを見回しても誰も居ません。「う〜ん・・おかしいな?」とまたシートに横になると・・・こんこん・・・・・ぎゃあああああ!でたぁああああああっ!!
直ぐにエンジン始動!ホイルスピンかませてその場所から逃げました。もー恐くてバックミラーもルームミラーも広い道路にでるまで一切見れなかったっす。結局何も見なかったのですが恐かったぁあああっ!!
・このお話は妄想で書かれたものなので現実には存在しません。
・著作権はたかしんににあります。
・無断改良アップはやめてね。