僕の中に強引に憑りついたきみこ。彼女はとても仕事ができる女性だった。ひかるの変体版きみこは飛び込みで会社訪問し『一ヶ月ただ働きでいいから仕事をやらせて欲しい!』と交渉し、見事採用!一ヶ月の研修員として働き見事結果を出し本採用となった。それも中途採用としては異例の地位まで手に入れて・・・。働く時は身体の実権をきみこに渡し働いて貰っている。つまりは僕はきみこのひもになった訳だ。
なお僕の会社での性別はおとことして仕事をしている。戸籍が男だもん仕方ないやね。会社内では仕事ができるオカマさんとしてやっているのだ!


真夜中の使者4

作 たかしんに


「なぁ〜十時休みも取らないで働きずめだけど身体大丈夫?」

「うん!身体が実体化して働けるってすごい快感なんだ。あ〜これよこれこれ、この充実感が欲しかったのよ。」


「きみこが働いてくれて僕は楽できて助かるけど。あまり根詰めると身体に悪いよぉ〜。」

「今のあんたって私のヒモよね?い〜御身分ですこと。お〜ほっほっほっほっほっ〜。」


「きみこ?きみこの所為で僕がアバロンを首になったって事、忘れていないよね??」

「あら?そうだったかしら?そんな事があったならご免あそばせ〜。」



いちいち感に触る女だ。もしこの世に生きていても僕は美人のきみこをナンパしない!!
僕の軟派な性格だと絶対きみこに声掛け捲った事だろう・・・・。



「あ、あのね〜ひかるぅー。そろそろ私を殺した男に復讐しに行きたいんだけど?」

「きみこ?君って殺されたの?彼氏に?」


「そうなのよぉー。私が彼に愛想つかして別れ話を切り出したの。そしたら逆上しやがって首閉められて息の根止められちゃった。えへっ!!」

「でも君を殺したんなら刑務所に入ってるんじゃないの??」


「それが私を山に埋めちゃって平然と今でも生活してるの。霊体のまま男の前に何度も出てやったんだけど奴に霊感全くなくて全然駄目なの!だからこうやって霊体の私が実体化できたのはうれしかった。」

「それじゃぁ〜これから警察に行ってきみこが埋められている所を言いに行けばいいんだね?」

「そんなもんじゃ私の恨みは晴らせないな、ふっふっふっふっふっ!!」


「きみこ?この身体は今はきみこに変体しているけど実際の持ち主はこの石塚ひかるだからね。この身体で殺人なんかされると困るのはこの僕なのはわかってる??」

「もちわかってるわよぉ〜。折角実体を手に入れたんだからすぐ刑務所なんかに入りたくないもん!」


「じゃぁどうやって元彼に復讐するの?」

「殺した人間の心理を利用して、この身体で奴の前にちらちら出てやれば奴も罪悪感から追い込まれて行くと思うの。」


「う〜ん、でもきみこを埋めて平然と暮らしている男なんだろ?うまく行くかな?」

「ふっふっふっふっふっ!うまく追い込んでやるわっ!ねっちりじとじととね・・・・。」



僕は女の怨念って奴を目の当たりしてまじでびびった!それになんと彼女を殺した元彼は、この会社の隣ビルに居る奴なんだって。きみこの奴、これを狙ってこの会社に就職したのか。



次の日のお昼休み、元彼の山田康夫(やまだやすお)がいつもランチを喰う店に顔を出した。お昼どきなので込んでいたがきみこはすぐに康夫を見つけたようだ。店の奥の4人掛けの席に同僚2人と座っている屈強な男、かなりの美男子だ。この男とだったらきみこと釣り合うなぁー、などど思っているときみこは店内を横切りその席の前に立った。


「相席・・宜しいかしら?」


ソバを喰いながらきみこに視線を向ける3人の男。康夫がきみこを見てソバを目の前の同僚二人に吐きかける!!


きみこぉおおおおおっ!?


店内中に響き渡る康夫の声。その声に驚き総ての客の視線が康夫ときみこに集中する。
きみこは表情を一切変えず

「私はそんな名じゃないわ・・・・・。人違いじゃなくって??」

そう言うなり空いている席に腰をかけた。前の同僚は吹き掛けられたソバを必死で取り除きながら康夫に悪態を付く!!


「ぬぁにすんだよぉおおおおっ!やすおぉおおおっ!俺等にソバぶっかけやがってぇえええっ!!」

「ああ?ああ・・・・すまない・・・・・・。いや・・ちょっと・・こちらの女性が・・・・あまりに知り合いに似てたものだから・・・・。」


「私があなたの死んだ彼女 にでも似てたのかしら・・・・?ふふふふふふふふ。」


くわぁああああああああ!すごいっ!これが女の怨念って奴かぁあああ!僕はきみこの中でめちゃくちゃびびり捲っていた。
元彼の康夫は僕の数十倍はびびっているだろう。顔面が青を通り越して土色になっている。すぐにぶっ倒れそうな顔色だ。


「おいっ?康夫?どうしたんだよ。顔色がおかしいぞ?気分でも悪いのか??おいっ!康夫っ!!」


「あ?ああ・・・ちょっと気分がすぐれないんだ・・先に失礼する・・・。」


震える手で財布から金を出し、同僚に渡す。そんな中でも康夫はちらちらきみこの顔を盗み見する・・・・。そこで初めてきみこがニタァアアアアアア〜っと笑った・・・。


今日からここの店で昼食を取り始めたのだが三日目で康夫は来なくなった。康夫と一緒に来ていた同僚になにげに訊ねてみる。


「康夫?なんかあなたがこちらに見えられるようになってから様子がおかしいんですよぉ〜。失礼ですけどあなたと康夫のご関係は?」

「ふふふふ。私はあなた方の会社の対面の会社で働いているOLです。あの方康夫さんって言う名なんですか?存じ上げませんでしたわぁ〜ふふふふふふふ!」



その晩の僕のアパートにて・・。


「ねえね、ひかるぅ〜。」  「なに?」

「やったわ!」  「やった?やったって何をやったの??」


「康夫の奴、以前は全くの霊感無しだったのに今じゃすごーい霊感の持ち主になったわよっ!」

「だって今まで霊感無かった人がなんで霊感持ちになっちゃうの??」


「それは死んだ私が目の前でちょろちょろしているから。今までまったく霊の存在を信じていなかったのに今の康夫が霊を信じるようになったから霊感のチューニングが合って今ではひかる以上の霊感の持ち主よ。これから目一杯やってやる!
だから暫くひかるの身体から出ちゃうからね。私が出たり入ったり、ひかるの身体をきみこに変体させるのはひかるの生命力をかなり低下させるの。
だから暫くのお別れね・・・・。会社うまく誤魔化して。康夫のあの状態だと長くはかからないわ・・・・・・。じゃあね・・・・・・。」


彼女はそう僕に告げるとひかるから出ていった。その瞬間きみこ体からひかる体へと変化する。ひかるになった僕を鏡を通して見る。無性にきみこの身体が懐かしく感じたが仕方が無い。彼女の御勤めが終了するまでの我慢だ。
さてと、当面の問題は会社でのきみこの代変だな。

次の日いつものスーツ姿で出勤する僕。変わっているのは腹を思いっきり巻いたテープ(くぼみを出す為)、形を出す胸パット、厚みを出す尻パット、顔には包帯ぐるぐる巻きできみこである事を偽る。
会社には交通事故にあって包帯を巻いていると申請したのだがいつまで持つやら頭痛の種だ。

今までかなりの業務成績を誇ったきみこだが僕に変わってからその成績は戦闘機による急降下のように一気に下がった。会社はあれだけの才の持ち主だからと言って二ヶ月は大目に見てくれたが一向に上がらぬ成績といつまで経っても取らない顔面包帯に不信を抱き結局二ヶ月とちょっとで僕は解雇となる。
その事はきみこの有能さの証明であり僕の無能さを実感させる羽目になった。
僕は会社を首になった今も就職活動する事無く、マンションでボ〜と一日を過ごしていた。


「きみこぉ〜。早く帰ってきてよぉ〜しくしくしくしくしく死苦死苦死苦死苦死苦ぅ〜!!」


僕は本気でそう思っていた。もう自分で働く事など頭から抜け落ちる。きみこにひかるの身体を貸してのヒモの生活以外もう僕には考えられない。



きみこが僕から出て行ってもう四ヶ月経ったがまだ彼女は戻らない。何かあったのだろうか?まさか霊媒士とかを元彼に呼ばれて返り討ちに遭っているのではないか?
きみこの心配をしながら僕は独り残暑厳しい夜を過ごす。

真夜中をちょっと過ぎた丑三つ時、ある意味懐かしいあの音が僕のマンション外窓から伝わって来た。


「ず・・・ずず・・ずずずず・・ずずずずずず・・・・。」


なにかがずるような音。僕にとっては忘れもしないきみことの対面時の音!


「ずず・・ずず・・ずずずずず・・・・・・。」


僕はクーラーがガンガン効く室内で布団を被り彼女の帰りを心踊らせ待つ!


「ずず・・ずず・・ずず・・・。」


音はついに室内に入り込んできた。きみこがもうそこに居るのだ。僕は崩れている顔身体のきみこに気を使い寝た振りを決め込む。ベット、ちゃぶ台、化粧台などががたがた揺れ始め、きみこはついに僕の寝ているベットまで這い上がった。


ただいまぁああああ〜!!



きみこは僕にのしかかりそのまま僕と一体化した。これから僕のヒモ生活が再びはじまるのだぁあああああっ!!




あとがき

以前僕の部屋には母のコレクションである黒人の人形が多数ガラスケースに入れて置かれてありました。ダッコチャン人形をコケシにしたような風体です。それらが受験勉強中の午前二時頃になると揺れ出すんですよね・・・・。全部じゃないのですが幾つか・・揺れるの。


・このお話は妄想で書かれたモノなので現実にはありえません

・著作権はたかしんににあります。

・無断改良アップはやめてね。