〜 きまぐれジャズ講座 第一回 〜

☆基礎編:1. ジャズってなーに?

 さて、ジャズ。 ジャズとは?と定義することは、とても難しいですね。ただ、これだけは言えます。「アメリカで生まれたアメリカ音楽」。実は、超大国、アメリカの歴史は御存知の様に浅く、文化とまで言えるものの輩出はとても少ないのです。アメリカ文化といえば、真っ先に出てくるのは、このジャズ、そして、西部劇、ハンバーガーくらいなものでしょうか。お寒いアメリカ文化にとって、世界に誇る代表選手、それがジャズなのです。

 そのジャズをあえてそれを定義すると、こうなります。

「奴隷として連れてこられた黒人達が持ち込んだアフリカ音楽的要素(打楽器中心・複雑なリズム・即興的)と、西洋音楽的要素(複雑な和音・理論)が交じり合って出来た音楽。」うーん、難しそう。

2. どんなリズムなの?

ジャズと言えば、4ビート。4ビートと言えば、ジャズ。ジャズのリズムにはいろいろあるけど、やっぱり基本は4ビートですね。4ビートって何かって聞かれたら、ちょっと説明するのが難しいんだけど、基本は4拍子で、その1つの拍子の中に3連符が隠れているやつです。「つーちっき、つーちっき....」ってやつ。…え?解らない?そりゃーそーだろうなぁ(^_^;)。では、聞く方が速いですね。音楽付きのグリーティングカードを見つけたので、こちら(今現在not found)へどうぞ。

http://www.ynot.co.jp/view/ynot/136249727251182433 

これぞジャズって感じ。少し解りづらいですが、シンバルの音を聞いてみて下さい。4/4拍子の頭には、必ず音があります。その他に「つーつたた..」とかいう感じで、余計に入っている音は、ほとんど必ず1拍を3分割した場所のどこかにあります。大きな4拍子の中に、小さな3連符が隠れている。これが4ビートです。このリズムが、ジャズ独特のグルーヴをもたらすっつー訳です。

それでは、8ビートは、と言うと、我々がロックなどの幅広いポップスで聞くときのリズムがこれです。あまりいい例が無かったのですが、こちら(現在not found)をどうぞ。

http://www.ynot.co.jp/view/ynot/181478273680100157

こりゃーラテンだなぁ。だけど、基本は同じ。「つつたつつつたつ」ってやつ(何だそりゃ?)。要するに、8拍が基本で、強音が3つ目と7つ目に来る。これを応用して、16ビートは、「つくつくたくつくつくつくたくつく」ってやつ。うーん、わっかるかなぁ(^_^;)。ジャズでも、8ビートのものは結構あります。俗にジャズロックなんて言われることもあります。16ビートはジャズには無いかもしれません。

おまけで、2ビート。これは、たけしでしたね(^_^)。毒ガスだぁ。

 

☆スタンダードを聴こう!

ジャズってのは、私にとっても最初とっつきにくいイメージがありました。やっぱりクラシックでもロックでも、コンサートに行く時には、知らない曲を聴くのと知っている曲とでは、全然面白みが違いますよね。ロックとか歌謡曲と違って、ジャズはアドリブ中心だから一回一回演奏が違うけど、アドリブの基になる、「テーマ」部分は、スタンダードの様ななじみ深い旋律が好んで使われます。

典型的なジャズの演奏は、テーマの演奏を終わると、テーマのコード進行と小節数を基本に、メロディを省いてアドリブが演奏されます。楽器毎にアドリブが繰り広げられて、またテーマに戻って終わります。これがジャズの基本です。ボーカル等の場合はやや変則的なこともあります。

ではスタンダード(ジャズ)って何でしょう?スタンダードナンバーとは、もともと毎年平均的な好セールス、つまりはスタンダードな売れ行きを示す曲のことを言ったのでありまして、エバー・グリーンとも言われることもあったそうです。そして、これらの曲がジャズメンやジャズシンガーに取り上げられ演奏、歌い継がれてきたのが、今日で言うところのスタンダードとなってきているわけです。スタンダードをテーマに使ったジャズがスタンダードジャズと言えます。

では、これから馴染み深いスタンダードナンバーを少しずつ紹介していくことにします。

1. 慕情(love is a meny splendered thing)

ちと古い映画だが、「慕情」をご存知でしょうか。あの、まだイギリス統治下だった頃の香港を舞台に女医と米国従軍記者の悲恋を描いた映画です。あの香港の高い丘から一望する香港の風景が忘れられない名作ですね。

love is a meny splendered thing は、その映画のテーマ曲というべき作品です。

TSFファンなら誰でも知っている(?)、ご存知ラブピーの予告編ムービー、皆さんは見ました?この中で、主演女優のトモコ嬢が口ずさんでいたのが、これ、慕情の替え歌でした(^_^)。

この主題歌は、世界的に大ヒットして、ジャズの世界においてもすっかりスタンダードとして定着しています。作曲はポール・フランシス・ウエヴスターで、アカデミー主題歌賞も受賞したそうです。

 

お勧め名盤

ナット・キング・コール/『<SUPERNOW>ナット・キング・コール』 東芝EMI

名盤という訳ではありませんが、その名の通りキング・オブ・ヴォーカル、ナット・キング・コールの心暖まる名唱から選ばれたベスト曲集です。まさにこの曲のボーカルバージョンの極めつけです。他の曲にもしびれること、請け合い。ナタリー・コールは実の娘というのは御存知ですね。

クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット/『ベイズン・ストリートのブラウン=ローチ』レーベル : エマーシー

夭折した天才トランペッター、クリフォード・ブラウンの天を駆けるような演奏が満喫できる名盤です。こちらはボーカルなしです。テーマのリズムにかなり工夫を凝らしています。ジャズのCDを10枚以上聞いたくらいから?是非どうぞ。(もちろん最初に買っても楽しめます。)

 


☆応用編:私の出会ったJAZZ GIANT達

えっと、ここからは私が以前に聴いたジャズの巨人たちの印象記を書きます。最初に断っておきますが、はっきり言って、本稿はかなり個人的な話です。ややもすると「自慢話」ととられるかもしれません(^_^;)。ですから、そんなんでもまーいっか。という人だけ読むようにされてください(^_^;)。読んだ後、「だからどうしたぁぁ!」という突っ込みが聞こえてきそうな気もしますし、興味の無い方には全然面白くない、極めて狭い世界での話ってやつです(^_^;)。

 

第1回 アート・ブレイキー

モーニンっていう曲を知っていますか?題名は知らなくても、大抵の方は、多分CMなどで聴いたことがきっとあると思います。

いわゆるファンキージャズ1)の大御所でもあり、ジャズメッセンジャーズというユニットを長期間率いて、沢山のスタージャズメンを若手のうちから文字通り育て上げた、名ドラマーです。

奥さんも日本人という親日家で、日本にも何度も来たことがあるのですが、私はニューヨークのジャズクラブ、スイートベイジルで彼の演奏を聴きました。

ニューヨークは、知る人ぞ知るジャズの本場の街です。世界中の一流ジャズメンは、何故かニューヨークに集まります。そんな中、当時のアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに加入することは、若い才能あるジャズメンにとって、一種の憧れだったのでした。

さて、開演1時間前くらいからスイートベイジルの最前席に陣取り、ビールなんか飲みながら、めくるめく演奏に思いを馳せる。…すると、ステージ上に、トロンボーンプレイヤーがひょっこり出てきて、マイクの調整をしだした。ドラッドヘアの黒人の彼、調整が終えると、何とステージ上にどっかりと腰を下ろした。私の真正面、その距離約2mである。一般にジャズメンは気さくで、観客とジョークを飛ばしあったり、バカ話に乗ってくれたりする。彼の場合は、まだ若手で観客も彼のことをあまり知らない様で、話しかける客もいなかった模様であったが、私は彼の演奏をテレビで見たことがあったこともあり、思いきって声をかけた。予想通り彼は私とちゃんと会話をしてくれた。実は初めての海外旅行だったこともあり、語学力の壁があって大した内容は喋れなかったが、まずはどきどきしながら少々のよもやま話くらいは楽しめた。

さて、いよいよ開演。三々五々といった感じでメンバーがステージ上に所狭しと並びだす。フロント4人の大編成である。いずれもどこかで見た顔ぶれ。壮観。そして、いよいよブレイキー御大の登場であった。誰かに脇を抱えられながらの登場。歩くのがやっとといった風体である。見たところ、本当に両手にすっぽりと入りそうな、小さな黒人の老人といった感じであった。メディアで見慣れた、あの精悍なぎょろ目のマスクを予想していたら、何だか少し肩すかしであった。…ふと、脇を抱えて出てきた笑顔の人を見ると、何とベニー・ゴルソン2)であったのには、びっくりしたが。

ステージに上がっても、何だかふらふらしている。どこかで飲んででも来たのだろうか。『本当に大丈夫?』っていう思いを禁じ得ない。でも、ドラムセットの前に何とか座り込んで、スティックを握り、無造作にドラムを叩き出したら......!.....それはもう紛れも無いブレイキーサウンドであった。重厚なフロントセクションを相手に、パワフルなドラムで応酬。熱い演奏が繰り広げられる。一通りのソロが終わり、いよいよドラムソロ。これが、いつもと同じ圧巻。完璧にブレイキーのリズム。ブレイキーの世界。あの小柄な老人からこんなパワーとグルーブ溢れる音が紡ぎ出されるのは、やっぱり驚異であった。もう彼は生き神様の域に達していたのであろうとの思いを禁じ得なかった。

ジャズメンは一般に広いコンサート会場で演奏するよりも、この様な小さい会場で演奏することを好む。観客も、演奏の合間のMCでは平気でミュージシャンに大きな声で冗談を飛ばしたりして、笑いに包まれることもしばしば。熱い演奏になれば、自然と客の歓声もヒートアップする。特に、今夜はステージはアート・ブレイキー。スイートベイジルの中は盛り上がりまくる。それにしても、彼と私の距離は、本当に10mあるだろうか。うーん、ジャズを好きで良かった、と思った瞬間。こうして(ジャズクラブにしては大変)美味しい料理と共に、スイートベイジルの一夜を堪能した私であった。

後日談。翌日、カバンから見慣れない細長い板が出てきてびっくりした。何と、スイートベイジルの勘定書。何かの拍子にかばんの中に入ったらしい。そう、私は無銭飲食&タダ聴きしてきたのであった。幸い、その日もジャズクラブのハシゴにいそしむ予定だったので、当日夜に再訪して支払ってきた。従業員は、あまりの出来事に目を丸くしていたみたい。はは。

その後も頻繁に来日して、健在振りを示していた彼であったが、1990年に71才で天に召された。合掌。

 

アート・ブレイキーの代表的アルバム

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ 『モーニン』

これはもう、極め付きです。名盤中の名盤です。泥臭い黒人ジャズ、ファンキーといえばこれ。私もこれからジャズの深みに入りました。スマートでおしゃれなジャズを求める人には、ちょっと向かないけどね。他にも推薦アルバムならうんとあります。

注について:

1) ファンキージャズ:もともと黒人特有の体臭を指す隠語だったらしいが、転じて黒人独特の泥臭いリズムのうねり溢れるジャズのことを指す様になった。ゴスペルの手法を取り入れているものもある。代表的なファンキーのミュージシャンは、アート・ブレイキー、ホレス・シルバーやボビー・ティモンズ等。

2) ベニー・ゴルソン:アルバム『モーニン』でも大活躍した名テナーサックス奏者兼作曲家。知性と愛情溢れる人柄で、アル中だったアート・ブレイキーのスケジュール管理をこなして世界的に有名にさせたのは、彼の功績が大きいとされている。まさか会えるとは思いませんでした(ちょっと感激)。


あとがき

さて、第一回は以上です。如何でしたでしょうか。

私には、こういうものを作る才能も何も無くて、何だか冗長なものになってしまいましたが、もし要望があればまた続けていろいろ書いていきます。

ジャズには、非常にいろんな種類があって(というか、あるように見えて)、最初はとても取っつきにくい印象があります。でも、いわゆる名盤と言われるものは、初心者にとって、中には最初は「何だこりゃ?」と思う様なものがあることはありますが、聴くうちにきっとその良さが解る様になると思います。

ジャズ講座と言っても、ジャズと仲良くなる方法は、やっぱり習うより慣れろで、いいジャズを沢山聴くのが早道だと思いますね。「どんなのを聴きたい」という要望があれば、なるべくそれに見合う奴を紹介致しますので、気軽に掲示板やメールで御相談下さいませ。

それではまた!

きょうじ 

 

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