〜 きまぐれジャズ講座 第二回 〜

☆基礎編:1. ジャズはどんな楽器で演奏されるの?

 皆様はジャズというと、どんな音楽を連想しますか?よくおしゃれなバーなんかでかかっている曲、フリージャズの激しい奴、CMで聴いたことのある曲....いろいろありますね。ジャズの楽器編成は、基本的に中心は、リズムセクションと言われる、ベース(一般にコントラバス)、ドラム、ピアノの3つです。これだけで編成されたものが、いわゆるピアノトリオ。これに管楽器が一本入るとカルテット(四重奏)。ワンホーンカルテットなんて言って、トランペットやサックスなどが代表です。もう一本入ると、クインテット(五重奏)。この3種類が、いわゆるモダンジャズの標準的スタイルです。

 もっとも、ジャズの魅力は楽器編成の柔軟性ですね。ピアノなどのソロももちろんあり。デュオ(二重奏)からビッグバンドまで、大抵の組み合わせでジャズは成立してしまいます。あ、もちろんボーカルもありですね。

 ジャズのメジャーな楽器を順にあげます。

 トランペット:ジャズと言えばペット。ジャズのルーツである、ニューオーリンズのジャズ時代からずっと使われている楽器ですね。でも、実は演奏が結構難しくって、今は才能あふれるジャズメンが数える程しかいないのが現状です。

 アルトサックス:ビバップと言われるスタイルの開祖、チャーリー・パーカーの楽器がこれ。演奏が比較的簡単で、指が回りやすいため、演奏家には超絶技巧の持ち主が多いみたい。でも、「音の渋さ」では次にあげるテナーサックスには負けてる。でも、ポール・デスモンドとか、ジャッキー・マクリーンとか好きです。

 テナーサックス:うーん、いわゆる「むせび泣くテナー」って印象が強い人もいるかも。一音だけ「ずぅぅぅっっっ」って吹いたら、それでジャズになってしまう楽器かなぁ(私見)。とにかく、今やジャズには欠かせない楽器。テナー吹きのジャズの巨人は、んもう星の数ほどいます。

 ピアノ:もうこれこそ定番中の定番楽器のピアノなんだけど、ブラスバンドから発祥したと言われるジャズ発生当初はジャズに不向きな楽器と言われたらしい。もちろん今はジャズはピアノ無しでは語れない。リズム、メロディ、ハーモニーを全部出来る、真の楽器の王様っていうのは言うまでもないですね。

 ベース:「ブン、ブン、ブン、ブン」とダブルベースのピチカートが聞こえてきたら、それ、ジャズ。リズムと和声を担当する、縁の下の力持ち。やっぱりジャズと言えばベース。

 ドラム:「おいらはドラマー」じゃないけど、ロックに比べてそれ程目立たないジャズドラマー。だけど、ジャズドラマーに言わせると、ロックって、ただリズムを刻んでいるだけで、ちーとも面白くないんだって。(確かに今は機械で出来るかも。)ジャズドラミングの面白さは、他のプレイヤーがいろいろアドリブなんかで「仕掛けて」くるのを、当意即妙に音で返すことなんだって。もちろんジャズには欠かせない。

 ボーカル:これがあるのと無いのとでは、結構分類に区別が出来る。ボーカルものを一切聴かない人もいるとか。でも、最初は歌があると入りやすいですね。映画「カサブランカ」で、サムの弾き語りのAs time goes byを聴いて、ああ、こういう音楽もええではないか?と思ったのがジャズ聴くきっかけだったりします。

 その他にも、クラリネット、バイブラフォン、ギター、トロンボーン、バリトンサックス、ソプラノサックス、オルガン、バイオリンなど、まぁ何でもジャズになっちゃいます。ナベサダ(渡辺貞夫)は、朝起きたらジャズ。歯を磨いてじゃず。朝食を食べてジャズ。生きているのがジャズ。みたいなことを言ったそうな。ある意味すごい。

 

☆スタンダードを聴こう!有名曲特集

 今回はリクエストにお応えして、超有名スタンダードを一挙紹介したいと思います。スタンダードって、やっぱりというか、もともと歌曲のものが多いですね。それも、やっぱりラブソングが多いです。恋愛小説の中に効果的に使われたりすることもあります。

 

1. 枯葉(autumn leaves)

 葉っぱ隊ではありません(^_^)。原曲は、言わずと知れたシャンソンですね。枯葉は、ジャズメンなら大好き。これを演奏しない人っていないんじゃないの?って程です。何故?それは、コード進行がとっても魅力的で、アドリブの可能性がものすごく広がるからだと個人的に思っています。

2. マイ・ファニー・バレンタイン(My funny valentine)

 バレンタインという、あまり美人でない?彼女に対するラブソングですね。ビリー・ジョエルの「素顔のままで」に一脈通じる内容の歌詞です。チェット・ベイカーの名唱、マイルス・デイビスのプレイが有名です。

3. 星影のステラ(stella by starlight)

 これも定番ですね。千昌夫の名唱で有名に…って、それは星影のワルツ(笑)。ちなみに、彼のずっと前の奥さんは、元グレン・ミラー・オーケストラの専属ボーカリスト。ビル・エバンスの凛々しい演奏なんかがいいですね。

4. When I fall in love

 もし、私が恋に落ちたら、それは永遠の恋......なんていうロマンチックな歌詞が付いた、特にボーカリストが大好きな曲。ジャズには美容効果があるそうで、ジャズ好きな女性には何故か美人が多いそうな。残念なことには、その効果は男性には無い模様である(笑)。マイルスの感動的なミュートプレイが最高。

5. 私の彼氏(The man I love)

 こちらも特に女性ボーカリストが大好きな曲。ただ、私はこの邦訳はあまり好きではない。何だか「私のかれしがぁ〜」という、女子高生的な尻上がりのイントネーションが聞こえて来そうで....なんて言っていると、もうおじさんだなぁ。マイルスのいわゆる「喧嘩セッション」のもの(後述)が有名。

6. 朝日の様にさわやかに(Softly, as in a morning sunrise)

 これはジャズメンみんな大好き。モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の演奏が超有名。

7. On green dolphin street

 これも、ジャズメンみんな大好き。テーマ最初の、コードが幻想的にチェンジする部分が痺れます。私もよく演奏したものです。やっぱりマイルスの演奏が有名です。

8. あなたはすっかり私のもの (I've got you under my skin)

実は私、ジャズの曲名の日本語訳って好きではありません。この曲もそうです。…ただ、これも何となくTSF作品の題名になりそうな曲名ですね(^_^)。

9. オール・オブ・ミー (All of me)

多分ここに来ている多くの方は、「突然半身が女性に!?」という副題の同名ビデオをご存知の方が多いかもしれません。あの作品は、この曲名を意識して作られたみたいですね。"All of me, why not take all of me......"てな歌詞のラブソングですね。

10. サテン・ドール(Satin doll)

私に言わせれば、これぞジャズ・スタンダード!ってな曲です。何故なら、テーマが非常にしゃれているのです。シンコペーションと転調を効果的に用いて、非常にジャジーな雰囲気を持っています。しかし、昔買ったジャズスタンダードの本には、この曲はベスト100にもはいっていませんでした。何故でしょうねぇ。詩もあって、ボーカルバージョンも良し、サックスが入っても良しですが、やっぱりこの曲はピアノトリオで聴きたいものです。

 

☆スタンダードを聴こう!こっそりリンク、MIDIあるよスペシャル

えー、こうやって、折角?曲をリストアップしても、曲が無いと「????」ですよね(^_^)。そこで、探したらやっぱりありました。MIDIファイルで、オリジナルを制作している方が。

ということで、こっそり勝手にリンクしてしまいますので、聴きたい方はこちらから選んでくださいね。

まずは、こちらから。(いきなり音が鳴り出しますのでご注意。)

http://www24.freeweb.ne.jp/diary/odaji_h/i_midi.html(今現在not found)

ODAJING WORLD(今現在not found)というHPからです。ここには驚くほど大量のジャズスタンダードがあります。これで曲名を言われても大丈夫(^_^)。

次は...(こちらも音が鳴り出しますのでご注意。)

http://www.nao-studio.com/Midi%20Music/Midi.htm(現在not found)

BLUE JAZZのMIDIページです。ここの凄いところは、実際の演奏を究極まで真似てコピーしたMIDIを置いていることです。CDと比べたらびっくりすると思いますよ。しっかし、ここ、おしゃれですねぇ。ありゃ、ジャズ講座まである.....かなわんなぁ(^_^;)。


☆応用編:私の出会ったJAZZ GIANT達

えっと、ここからは私が以前に聴いたジャズの巨人たちの印象記を書きます。最初に断っておきますが、はっきり言って、本稿はかなり個人的な話です。ややもすると「自慢話」ととられるかもしれません(^_^;)。ですから、そんなんでもまーいっか。という人だけ読むようにされてください(^_^;)。読んだ後、「だからどうしたぁぁ!」という突っ込みが聞こえてきそうな気もしますし、興味の無い方には全然面白くない、極めて狭い世界での話ってやつです(^_^;)。

 

第2回 マイルス・デイビス

マイルス。晩年は大きく演奏スタイルを変えて、自ら切り開いたいわゆるフュージョンの世界に進んだ彼。ど派手の衣装に身を包み、背中を丸めてトランペットを吹いていた姿をどこかで見たことのある人も多いかもしれない。「帝王」の名前を欲しいままにした、彼の後半の演奏姿勢には、昔ながらのジャズを好むファンからは、厳しく非難されてきた印象がある。マイルスの真骨頂といえば、大抵の人は1950年代の頃の演奏のことを指すだろう。「卵の殻の上を歩くような」と評される、独特の繊細で温かい音達が、とてつもなく絶妙なタイミングで紡ぎ出される演奏。嬉々として演奏しているのが感じられる、心に染み入るミュートプレイ。聴き込む程に、次の新しいCDの一枚がどういう手で来るか、誠に楽しみだったのを思いだす。まるで、新作TSF作品を読むときの様(ほんとか?)。そんな楽しみが彼のアルバムを買うときにはあった。

そんな全盛期のジャズを、私に言わせれば全て捨てて、ポップなミュージシャンの間においてさえも頂点に君臨しようとしたかの様に、「電気」に走った「電気マイルス」時代。そんなマイルスのCDは、私にとって「はずれ」作品であった。

しかし、マイルスが私の街に来る、という話を訊いたら、それはまた別の話である。ジャズ界きっての伝説的トランペッター、帝王マイルス。例え演奏が気に入らなくても、これを逃したらもう一生生で聴くことができないかもしれない。そう思った私は、気が付いたらもうチケットを入手していた。

さて、いよいよコンサート。一万人近く入りそうなドーム会場には、多くのファンが詰めかけていた。

ステージ上にメンバーが出現して、簡単な調整を始める。その時、舞台袖から、「プーップーッ」っという、トランペットの音。

まさしくマイルスの音。本人にとっては、軽い音出し程度だったのであろう。しかし、私は、その2つの音だけで、もう昇天してしまった(!)のであった。まさに、マイルスマジック。

よく、俗に「値千金」みたいな表現があるが、この音、まさにそれ。世の中のアーティストで、ここまでのレベルに達している人って果たして何人いるのだろうか。私はこの2つの音だけで、もうコンサートに来た目的の殆どは達成した気持ちになった。

コンサートの内容は、実は良く覚えていない。ド派手な赤い革の衣装に身を包んで、ヒップな連中と一緒に背中を丸めてラッパを吹いていたのだけは確かだ。コンサートが終わると、やっぱり頭にこびりついて離れなかったのは、あの2つの音。後で、ジャズの雑誌を読んだら、やっぱりみんな同じ様な感想を言っていたみたいだった。

20世紀のクラシックの作曲家が、耳当たりの良いいわゆるクラシックではなく、現代曲と言われる一般には不可解な曲を好んで作曲するのと同じように、マイルスには同じ一カ所に留まるということが出来なかったに違いない。そんな中、あの温かい音が変わらないのが、我々にとって殆ど唯一の救いだったということかもしれなかった。

マイルス・デイビス、1991年9月28日没。享年65歳。合掌。彼もやっぱり死ぬまで帝王であった。

 

マイルス・デイビスの代表的アルバム

クッキン / マイルス・デイビス

名高いマラソン・セッションで吹き込まれたマイルス4部作中の1枚。ミュートで演奏される、バラードの極めつけ、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』が聴き物ですね。マイルスの絶頂期の演奏と言えます。

マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ/ マイルス・デイビス

俗に「喧嘩セッション」と言われる、ピアニスト、セロニアス・モンクとの間の音楽的喧嘩がはっきりと聞き取れる、手に汗握る演奏です(^_^)。主張のある男同士のぶつかりあい、聴き物です。もちろん演奏も素晴らしい。


あとがき

さて、第2回は以上です。如何でしたでしょうか。

早く次を作らなくては...とか思っているうちに、すっかり忘れられるまで更新がおくれてしまいました。失礼しました。

今回の特筆すべき点は、MIDIファイルが沢山あるサイトを見つけてしまったことです。おまけに、ジャズ講座まで併設されているところがあるではないですか!もうこれで大丈夫。ここの存在意義も、もはやこれまで....ってな感じ?(笑)

それはともかく、これで取り上げた曲がどんな曲か、簡単に解る様になりましたね。

というわけで、次回があるかどうか解りませんが(笑)、それではまた!

きょうじ 

 

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